ニッケルブログ

漏水を減らす

2020年1月30日

80年代に部分的波状ステンレス鋼の配水管が導入されて以降、東京での漏水率は劇的に減少しました。そして今、漏水を減らす差し迫ったニーズに直面し、変革を目指す他の多くの水道公社も、ニッケル含有ステンレス鋼による問題の解決を検討しています。

都市における水の安定供給と質の確保は、人口増加や都市化、気候変動の影響を大きく受けます。しかしながら水道設備における漏水は水不足を悪化させてきました。

2050年までに、都市部では70%の人口増加が見込まれており、水の需要は2000年より55%増え、40億人が水不足の地域に住むことが予想されています。水不足について、世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書では、影響が大きいリスクのランキングで「水の危機」が2018年の5位から2019年には4位に上がりまました。

多くの国では水道の蛇口にたどり着くまでに、生産された処理済みの飲料水のうち推定で20~35%が失われています

ところが、多くの国では水道の蛇口にたどり着くまでに、生産された処理済みの飲料水のうち推定で20~35%が失われています。ヨーロッパでは平均的な漏水率は26%ですが、ヨーロッパと北米のいくつかの主要都市ではその値が30%以上との報告があります。比較的GDPが低い国々の水道公社の中には約70%の水を失っているところもあります。OECDが2016年の調査で40都市以上を対象に調べたところ、漏水率はオランダのアムステルダムの4%から、メキシコのトゥストラ・グティエレスの65%まで幅がありました。

コストに合った解決策

水不足を補うため、多くの水道公社が追加の水源を確保し水処理プラントや淡水化プラントに投資しています。しかし、より費用対効果の高い解決策は、まずそれぞれの設備の漏水を減らすことでしょう。たとえ運営コストが抑えられて、水道代から収入を得られるようになるとしても、GDPが低い国々には設備を改善するための資金が単純にないかもしれません。しかし、世界的に持続可能性を重視する動きが強まる中、水道事業者が既存のシステムのムダを解消するためにあらゆる努力をしたという証拠がなければ、どの政府も新しい水源に対する追加の水利権を与えることを渋るでしょう。

持続可能性の観点からみると、水の損失は貴重な資源がムダになるだけではありません。経済的にも、取水、洗浄、殺菌、貯水、配水されたかなりの量が人々によって使用されていません。言い換えれば、必要とされる水への請求をしていないのです。

隠れた漏水

水の損失というと、水道本管の破損が連想されます。配水が中断され、驚くべき量の漏水が発生し、道路を掘削し、修理工が登場するという大惨事です。
ところが、最も多くの漏水は配水管で発生しています。漏水が発見されにくく、発見されたとしても時間がかかるからです。国際水協会の報告によると、水道本管の破損による1日あたりの損失は75㎥。それに対して報告されていない配水管の接続個所の破損により生じる漏水は6ヵ月の間に4,500㎥以上。それだけの漏水があって初めて水道公社はその事実に気づくのです。

報告されていない配水管の接続個所の破損により、6ヵ月の間に4,500㎥以上の漏水が発生

どうすれば漏水を減らせるか?

「埋蔵量」と「資源」の標準的な定義が重要なのは、採掘プロジェクトの投資家にとって非常に関係があるからです。一番大きな違いは「埋蔵量」の方は、高いレベルの知識と信用に基づいていることです。採掘会社による探査活動は絶えず資源を埋蔵量に変換しています。つまり、ニッケルのような原材料の供給量において重要なのは、地中に充分な量があるかということよりも、短い期間内に激増した需要を満たすために必要な生産能力があるかどうかです。

ニッケルの埋蔵量と資源

漏水を減らすには以下のような複数の手順が必要となります。

  • 地域を複数の測定対象区域に分割し、測定によって漏水個所を特定する
  • 漏水を効果的に特定するための徹底的な調査をする
  • 対象個所の修理をする
  • 特に使用量が減る夜間に水圧を減らす

しかし、この問題を長期的に根本的に解決するには、老朽化して水漏れしている排水管や接続箇所をより耐久性のある設備に交換する必要があります。

漏水はどこで起きるのか?

水道公社が水道システムの中で漏れの箇所を調査特定した結果、その90%以上が水道本管を家庭の水道メーターにつなぐ配水管で起きていることが分かりました。

漏水を減らすためには、この部分で漏れを防ぐことが特に効果的です。

配水管を長くもたせるためには、物理的なダメージや腐食への耐性がなければなりません。これまでは一般的に鉛や亜鉛メッキ鋼、または様々な種類のプラスチックや銅が使われました。配水管の漏れの原因は使われた年数や管の素材の種類、接続箇所、土壌や設置場所によって異なります。

漏れは、金属管が腐食したり、プラスチック管が割れたり、継手や遮断弁あるいはフェルール(媒介継手)が破損したり、つながれた配水管が外れたり、掘削作業によって損傷が生じたりした場合に起こります。配水管が埋められた土壌や管を流れる水によって腐食が起きることもあります。

多くの不具合の根本的な原因は、土壌や地震活動または上にある道路を走る重い車両からの振動による物理的な衝撃です。そのような衝撃を受けて、古い配水管や金具の継手が緩んだり、分離したり、金属管が曲がったり、プラスチックが割れたりします。

東京で使用されているステンレス鋼製の部分波形配水管

部分波形配水管

40年近く前、日本では不具合がある配水管や接続個所が徹底的に検証されました。ステンレス鋼304系や316系、炭素鋼、プラスチック、鉛や銅などの様々な素材や、さらには土壌の種類も対象となりました。比較の結果、316L系が耐食性と機械的特性の両面において最も優れた素材と結論付けられました。最初の配水管は直線状のもの(波状ではない)でしたが、一番弱い継手部分で漏水が起こり続けました。

1990年に開発された部分波形ステンレス鋼管は、この問題を解決しました。設置が容易なうえ、地震や重い車両の振動などによる地面の動きに合わせてしなることができたのです。それ以降、東京では、数千キロメートルにわたるステンレス鋼配水管が、改修と新たな建設プロジェクトの両方で他の素材に代わって使われました。

この東京でのプログラムの成功を受けて、韓国のソウルや台湾の台北などの都市で、漏水問題を解決するために配水管の漏れを修理するのではなく、交換するという独自のプロジェクトが始まりました。今ではアジアの35以上の都市にステンレス鋼配水管プログラムがあります。

ステンレス鋼のメリット

部分波形ステンレス鋼配水管316L系は、多くの素材関連の問題に以下のような答えを出します。

  • 衛生的であること
  • 強く丈夫なため、物理的なダメージに耐性があること
  • 耐食性があること
  • 水と反応しないこと
  • 低温下でも破裂しないこと
  • 耐震性があること
  • 耐火性があること

これらのメリットによって、漏水とランニングコストを減らすことが可能になります。また、くみ上げる水の量が大幅に減るため、エネルギー消費量も減少します。社会的な観点からも、都市のレジリエンスが増し、サービスが向上して、供給停止が減ることで市民の不安が軽減します。

ステンレス鋼製の部分波形配水管
撮影:Philippe de Putter / 出典:国際ステンレススチールフォーラム (ISSF)

経済成長は「潤いが必要なビジネス」

世界銀行によれば、経済成長は「潤いが必要なビジネス」です。水不足状態が増えつつある中、水の充分な量と絶え間ない供給を保証することは、世界の貧困軽減には欠かせません。水は国連の持続可能な開発目標のほぼすべてをつなぐ「共通の通貨」です。健康な人口を保全し、生産手段を保証し、地球のエコシステムを維持する上で、食料の生産に極めて重要な要素なのです。

部分波形ステンレス鋼配水管は、この貴重な商品の供給を保障する多くの水道公社に対し、長期的な解決方法を提供します。

より詳細な情報については、ニッケル協会や国際モリブデン協会、国際ステンレス鋼フォーラムなどの国際的な非営利団体にお問い合わせください。

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