ニッケルブログ

ニッケルに訪れた好機

2020年2月19日

技術を可能にするというニッケルの役割は一般にはあまり知られていません。しかしその多様な特性によって、ニッケル業界に絶好の機会が到来しているのです。

人口増加と「すべてをより多く」といったニーズの潮流は、ニッケルにとっての好機となっています。急速な都市化や、特にアジアに見られる人々の大量移動によって、より多くの住居、より多くのエネルギーや移動手段、より多くの食料、そしてより多くの衛生的な上水への要求が高まっており、これらはすべて持続的に供給されなければなりません。そしてニッケルの特性はこれらのニーズに大いに役立ちます。

機会...そして脅威

しかしながら、ニッケル業界はニッケルの本当の潜在力を発揮することへの逆風にもさらされています。使用されるニッケルの環境は変化しており、すべての事柄と同様に、ソーシャルメディアでの議論にさえ影響されることがあります。またニッケルにも競争相手がいます。他の材料に置き換えることができ、材料の仕様基準や認証の適用によって、参入への障害に直面しているのです。多くの仕様作成者はニッケル含有材料のメリットを知りません。そのため場合によっては、ニッケル含有材料の革新的な用途への適用のためにサプライチェーンを構築する必要性があります。

将来を担うエンジニアの教育

設計士やエンジニア向けのニッケル協会のワークショップ(シンガポールにて)

ではニッケル業界は、高コストな材料業界として認知されていますが、様々な場所で使用されているにもかかわらず金属の知識が不足している事実にどう対処するのでしょうか。ひとつの方法としては、ニッケルが持つ潜在力を知らない若い世代のエンジニアたちに注目してもらうことです。

ニッケル協会は中国やインド、東南アジアでの教育とマーケティングに特に力を入れ、先入観を変えて、新たな用途の設計や製造に携わる人々の「優先順位の上位」にニッケルを押し上げようとしています。

昨年、ニッケル協会の専門家チームは数千人のエンジニアや仕様作成者に向けて、数十回にわたるワークショップを開催しました。協会はまた、英語と中国語での技術サポートサービスを提供しており、年間数百件の技術的問い合わせに対し専門家チームが無料で回答しています。その目的は、ユーザーや仕様作成者にニッケルやニッケル含有材料の扱いに熟知してもらい、ステンレス鋼や他の耐食性・耐久性のある合金などを指定してもらうためです。

潜在力が高い用途

高い潜在力を持つニッケルの現在注目されている3つの分野は、水道配管、マリンスクラバー、そして電池です。それらすべてが気候変動と闘う社会のニーズを原動力とし、希少資源を守るのです。

水道配管

世界中の水道公社や都市が漏水を減らすことに注目しています。途上国における都市化は新しい設備を必要としており、また古くからある都市の老朽化した設備を交換するニーズと重なって、ニッケル含有ステンレス鋼を活用できる機会をもたらしています。

東京は漏水率を15.3%(1980年)から2.2%(2013年)に低減しました

ニッケル協会は、全力を挙げて革新的な部分波形給水管 (PCWT) による解決を支援してきました。この技術は、過去30年間にわたって東京で素晴らしい結果を出してきており、1980年から2013年にかけて漏水率は15.3%から2.2%まで減少しました。

ステンレス鋼製の部分波形配水管
撮影:Philippe de Putter / 出典:国際ステンレススチールフォーラム(ISSF)

ニッケル協会は協力団体と共に、現在ニッケル含有ステンレス鋼PCWTのメリットを、オーストラリア、アジア、北米やヨーロッパの世界中の水道公社に対して実証しています。これは正にこの時代向けの技術なのです。PCWTは、耐久性のある安全な水道配管を競争力のある価格で提供します。漏水を減らす潜在力は、特に地震が起きやすく水の少ない地域で重要であり、最も社会の対応が急がれる問題のひとつを解決するために役立っています。

マリンスクラバー

マリンスクラバー(大型船舶用の洗浄塔システム。大気汚染防止装置のひとつで、工業的な排出元からの煤塵粒子や排ガスを除去する目的で用いる装置)はニッケルにとって、時代に合ったもうひとつの用途です。環境規制は変わってきており、ニッケル含有材料の船舶用エンジンのスクラバーでの使用が増加しています。国際海事機関 (IMO) によって義務付けられた硫黄酸化物の排出に対する新しい上限が2020年1月1日に発効されました。このIMO2020規制に対応するため、船主はより高価な低硫黄燃料への転換もしくは排ガス用スクラバー装置の設置のどちらかを選べます。スクラバーを選べば、船はより安価な高硫黄燃料を使い続けられます。

スクラバーの内部は極めて過酷な環境であり、高温の酸性塩化物溶液が流れるため、耐食性の高い約30から50%のニッケルを含むニッケル合金の使用が必要となります。もしスクラバーに頑強性の低い材料が使われた場合、機能が停止する危険性は高くなります。そして機能停止によって船主には罰則が科せられ、修理の期間中は船が運航できなくなるという深刻な影響が出る可能性があります。ニッケル協会は、支障のない船舶の運航のため、調達にかかる正しい決定がなされるよう、的確な技術情報を提供するよう努めています。

マリンスクラバー
撮影:MEYER WERFT / 出典:Ingrid Fiebak-Kremer

電池の革命

では電池についてはどうでしょう。電気自動車のためのバッテリー電源や蓄電池、そして再生エネルギーへの移行は世界中で本格化しています。ここ数年、世間においてニッケル水素やニカド電池は「リチウム」の陰に隠れてきました。ニッケルが現代の電池において、革命的な成功を収めた支配的なリチウムとの化学組成にとって重要であることはほとんど理解されていません。今日、市場に出回っている大半の高エネルギー密度のリチウムイオン電池の主要原料がニッケルであることをどれだけ多くの人々が知っているでしょう。これらの電池にはニッケルが80%まで含まれており、このエネルギー転換の大きな流れはニッケルにとって一世代に一度の機会なのです。

新たな機会、従来の機会

電池やスクラバー、水道配管がニッケルにとって新たな機会の例である一方、従来から使用されている用途でも使い続けられています。ニッケルは上昇傾向にあり、この10年間に年間使用は毎年6%から7%に増加しています。機会はそこにもあるのです。

世界のニッケル生産
出典:国際ニッケル研究グループ(INSG)

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