ニッケルブログ

なぜ欧州の電池バリューチェーンには一貫性のある規制が「今」必要なのか

2020年2月29日

欧州のニッケル生産者たちは一貫性のある規制の枠組みを必要としています。健全な科学研究結果、リスクに基づいたアプローチ、ライフサイクルを反映した思考、ならびに影響調査などの原則に基づいた諸規則と共に、様々なEUの政策目標は一貫性を持たせなければなりません。

欧州バッテリーアライアンスが設立されてから約2年になります。本計画は欧州委員会とEU加盟国の政治的に最も高いレベルで立ち上げられ、採鉱からリサイクルに至る、電気自動者 (EV) のための完全な欧州の電池バリューチェーン(価値連鎖。原材料や部品の調達活動、商品製造や加工、出荷配送、マーケティング、顧客への販売、アフターサービスまでの一連の事業活動を、個々の工程の集合体ではなく価値の連鎖として捉える考え方)を構築することを目的としています。これはユンケル委員会のもっとも野心的な計画のひとつであり、電池バリューチェーン内あるいは周辺で活動するステークホルダーをまとめるものでした。

交通や移動における気候変動への対応の緊急性だけでなく、EUの産業界と市場をリードする欧州域外のバッテリー生産者間の格差を埋める必要性があることから、タイムリーで効果的かつ目標を絞ったやり方で動かなければなりません。

問題は電池のバリューチェーンをどこに設けるか。欧州や他の地域はこの市場機会から利益を得られるでしょうか

欧州委員会によれば、2025年から先、欧州は年間最大で2500億ユーロの電池市場を獲得できるとのことです。このことによって、少なくとも10から20の大規模な電池生産工場が必要になります。ここで明確にしておきたいのは、EVと電池の革命がやってくるということです。問題は、電池バリューチェーンをどこに設けるか。欧州や他の地域はこの市場機会から利益を得られるでしょうか。

原材料から電池生産やリサイクルまでを網羅した、様々な活動や具体的な行動を含む戦略的な行動計画が公表されました。産業の提携や協力が活発になっており、電池バリューチェーンの中の担い手のための資金調達手段を伴う多岐にわたる研究開発計画が開始されました。多くの投資が行われ、生産サイトは既に稼働しているか、短中期の間に稼働が予定されています。

計画保証と予測可能性

電池バリューチェーンは、個別の各生産段階と併せて、大きな資本を必要とします。資金調達手段は極めて重要です。この分野は2030年とそれ以降を見据えた長期的な投資を必要とし、このバリューチェーンの潜在的投資家には計画保証が必要です。

計画保証は、規則枠組みの一貫性と強いつながりを持つ予測可能性と密接に関連しています。産業界と投資家は、規制枠組み内で原材料の生産および電池の製造が可能であることを確信する必要があります。盛況なバッテリーと自動車産業、最終的に電池を再利用する他の産業、そして製品の耐用年数到達後の回収を担うリサイクル産業がなくてはなりません。

欧州の原材料生産

EVに搭載される電池に使われる原材料は重要な役割を担っています。欧州連合にとって、欧州の原材料生産を維持し促進することはさまざまな観点から重要です。

  • 欧州が輸入に依存することを回避します。
  • それらの原材料が環境と社会の最高の水準の下で生産されることを保証します。
  • 欧州において高技能で高賃金の仕事が維持され、GDPに大いに貢献することになります。
  • 欧州の金属生産はエネルギー効率が高いことで知られており、より低い二酸化炭素排出量とつながっています。そのことは電気自動車の全体排出性能に大きく影響します。

欧州ニッケル産業界にとっての課題

ニッケルを例に挙げます。現在と未来のEV用電池技術の主な構成要素のひとつですが、欧州のニッケル産業界は、特に中国の生産者を相手にした国際競争の増加などの課題に直面しています。何年もの間、欧州産業界はこれらの問題に対処し、競争力を維持する方法を知っていました。革新的であり続け、エネルギーと資源を効率化し、そして継続的に工程を改善し続けます。しかし規制枠組みには一貫性がないため、欧州で原材料の生産者が競争し、生産量を維持するのがますます困難になっているのです。ふたつの例を挙げましょう。

  • 欧州には電池の原材料に対する相当な需要がある一方、原材料の物質の一部が、生産時、使用時およびリサイクル時において安全であるとの実績があるにもかかわらず、高懸念物質とみなされるリスクが増しています。それらの物質の利用による社会的利益を十分に考慮しない、不均衡な規制によるリスクマネージメントという結果になる可能性があります。
  • ニッケルのような原材料の生産では、生産各社がエネルギー効率の改善を続けているものの、大量のエネルギーを必要とします。それらEUの会社は、増加した電気料金による間接的二酸化炭素排出費用に対する給付金の欠如が原因で、欧州における排出量取引にかかるコストが増え、国際競争力を失うリスクがあります。

EUの企業は、欧州における排出量取引にかかるコストが増え、国際競争力を失うリスクがあります

欧州は欧州内でそれらの原材料の生産を継続することを希望しており、このことは規制当局やバリューチェーンの他の担い手の関心事にもなるはずです。欧州のニッケル生産者たちが今、必要としているのは健全な科学研究結果、リスクに基づいたアプローチ、ライフサイクルを反映した思考、ならびに影響調査などの原則に基づいた一貫性のある規制枠組みです。このことによって我々は生産を継続し、持続可能な欧州の電池バリューチェーンに貢献できるのです。欧州内で仕事とノウハウを維持できる形で、気候変動への対処を支援するのに重要なバリューチェーンです。

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