ニッケルブログ

メタルズ・ゲートウェイ:金属関連情報の「ワンストップ・サービス」

2020年11月13日

金属は誰もが日常的に接しているものです。台所を見回してみるだけで、多くの台所用品、ナイフやフォークなどにニッケル含有ステンレス鋼が用いられています。自家用車や自転車も、電動であるか否かに関係なく、より速く、よりクリーンで、より安全であるためには、車体や電池を構成する金属がなくてはならないのです。

さらには、コートやハンドバッグや財布についているチャック、身につけている宝飾品に至るまで…。金属は現代社会になくてはならない存在であり、多種多様な製品に組み込まれています。私たちの社会に持続可能な利便性と喜びを確実にもたらすでしょう。

金属にも管理が必要

金属は、法による規制の世界において、社会が何の心配もなくその恩恵すべてを享受し続けられるように、管理が必要な化学品の分野に属します。規制担当者、当局者はその最善の管理法を理解するために化学品を評価し、何らかの有毒な作用を引き起こす可能性があるかどうかを調べます(危険源の同定とも称されます)。
リスクがある場合に実施されるのが次のような評価です。その化学品にばく露される可能性のある人は誰か?その場合のばく露レベルは?ばく露に関連するリスクの有無は?リスクに対する最善の管理法は?リスクが全くなければ規制措置の必要はありません。反対に、リスクがあまりにも大きければ、その化学品の今後の使用を禁止するのが最善かもしれません。あるいは、そのリスクが作業労働者限定であれば作業環境における規制が適用されるかもしれません。こういった疑問に答えるには、危険源とリスクの双方を考慮に入れた適切なリスク評価ツールが必要となります。これこそが、金属のこの上なく興味深いところ(少なくとも、科学者・規制当局・業界にとっては)なのですが、同時に非常に難しいところでもあるのです!

金属は違う

アルプスに生息する亜鉛スミレ。
亜鉛スミレは、アルプスの土壌に大量の亜鉛が天然に存在することを知っていました。
それを欲していたのです。まさに水を得た魚、この場合は亜鉛を得た花!

なぜ金属は有機物とは違うのか?

金属は有機化学品と大きく異なるからです。例えば、私たちが健康でいたければ、金属の多くはミネラルとして不可欠であり、体内に存在しなくてはなりません。その典型は貧血でしょう。血中の鉄分が不足することにより生じ、場合によっては深刻な状態に陥ってしまいます。それならば、貧血にならないために可能な限り大量の鉄分を摂取すべきなのでしょうか?いいえ、違います!鉄分過剰はヘモクロマトーシス(鉄過剰症)につながってしまうからです。最悪の場合は肝不全を招いてしまいます。必要なのは、多すぎず、少なすぎず、適量なのです。

環境との関係は?金属はどこから来ているの?

地球からです!金属は天然由来の元素ですから、自然に存在します。地質によって、他よりも豊富に存在する地域があるのです。ひとつの例が「亜鉛スミレ」というアルプスに生息する美しい花です。なぜ亜鉛スミレはその地に生息するのでしょう?亜鉛スミレは、アルプスの土壌に大量の亜鉛が天然に存在することを知っていました。それを欲していたのです。まさに水を得た魚、この場合は亜鉛を得た花!

これらは金属と別の化学品との違いを示す例のほんのひとつに過ぎません。こういった事情から、有機化学品向けに開発された従来のリスク評価ツールが金属には必ずしも当てはまらず、さまざまな問題につながってしまうことがあります。金属の規制は正しい仮定やデータに基づくことが重要です。というのも、私たちが現在使用している製品の恩恵すべてを安全に享受し続けられるようにすることは、政府、産業、しいては社会全体の利益になるからです。「安全に」とは、金属に適用される規制が適切な科学的根拠と評価に基づいていることを意味します。

「安全な使用」とは、金属に適用される規制が適切な科学的根拠と評価に基づいていることを意味します

金属に関する情報へのアクセスを容易に

長年にわたりこの問題に取り組んできた金属業界は、規制当局が金属を取り扱う際、必要な情報がなかなか入手できないという壁にぶち当たっていると認識しました。そこで、Eurometaux(欧州非鉄金属業協会)といくつかの金属関連協会が立ち上げたのが、メタルズ・ゲートウェイ(https://metals-gateway.com/)でした。メタルズ・ゲートウェイとは、金属、金属化合物の規制担当者や下流ユーザに環境や健康を保護しながらこれらの物質を安全に使用してもらうことを目的として、必要な情報へのアクセスを容易にする、オンライン上のポータル・サイト(Web上の様々なサービスや情報を集約して簡単にアクセスできるようにまとめた、Web利用の起点となる玄関サイトのこと)です。


「メタルズ・ゲートウェイ」には次のメニューが含まれています

  • 環境中の金属:金属は何が違うのか、金属がさまざまな条件下(水質、pH など)において、他の物質や生物有機体とどのような相互作用をするのかに関するファクトシート。
  • REACHメタルズ・ゲートウェイ:欧州REACH規則とCLP規則の実行プロセスにおける、EUおよび世界中の金属産業向けガイダンス。REACHメタルズ・ゲートウェイは当局および金属産業から公表された関連情報に迅速かつ体系的なアクセスを提供します。
  • メタルズ・ツールボックス:危険源の同定とリスク評価にあたり金属特異性を反映した規制当局者と関係者向けのツールとガイダンス。

実用的なツールボックス

メタルズ・ツールボックスは、危険源の同定とリスク評価のために開発された様々なツールを集約した、最新の金属関連サイトです。これまで、規制担当者や関係者が危険源の同定とリスク評価において金属特有の側面に対応できるようにするために数々のツールやガイドラインが個々に開発されてきました。その一部は各地、地域、国際レベル(例:米国の州レベル、EUレベル、OECDレベルなど)で規則に取り入れられてきましたが、さまざまなチャネルを通して別々に配布されていたというのが事実でした。このため、規制担当者や関係者の多くがその存在すら知らなかったツールやガイドラインがあるだけでなく、ひとつの金属の総体的な評価において、それぞれがどの規制に当てはまるのか誰も簡単には分からないという状況にありました。

そのすべてが、今般ようやくメタルズ・ツールボックスに集約されたのです。目的は、一般論として金属の何が有機化合物と大きく異なるのかを説明する一方で、単一のウェブサイトですべての開発されたツールを無償で容易にアクセスできるようにすることでした。

ニッケル協会は、この重要なイニシアチブに参加することができたことを誇りに思うと同時に、ニッケルに関わるすべての人がこのゲートウェイ(入り口)を覗いてくださることを期待しています。なにしろこのメタルズ・ゲートウェイは一言で言うと、(フランス語で)c’est nickel!(これがニッケルです!)なのですから。

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