ニッケルブログ

電気自動車の安全性:懸念と考慮

2021年3月5日

電気自動車(EV)がニッチからマススケールへと向かい、それに対峙する燃焼エンジン(ICE)との境がユーザーにおいて不鮮明になってくるなか、消費者、自動車メーカー、政府、そして車両火災を扱う消防署などは懸念を払拭できずにいます。

なかでも、電池火災と爆発は、メディアから並々ならぬ関心を集めている事象です。大手自動車メーカーは、この課題の真只中にあり、電池のコストを下げ、EVを取り巻く走行距離の不安に対処する一方で、安全に対する配慮が何よりも重要であることが強調されているのでした。新技術に共通することではありますが、このような事象のリスクを最低限に抑えるために、業界がベストプラクティスと安全基準を導入し、電池の化学的性質、セル設計、電池管理システムの適切な組み合わせを配備することが重要となります。

EVは、市場に参入してからまだ日が浅いため、正確なデータと信頼性の高い情報による安全性プロファイルの裏付けが困難です。結果としてICE車と健全な比較を行うのは難しいと言えるでしょう。さらに、ICE車は、優に1世紀以上前から存在しており、ICE車がもたらす火災のリスクや、これを軽減するために必要な多くのことが理解されています。

リチウムイオン電池は、それが搭載されるEVも、適切なリスク管理をもって使用されれば、今日利用可能な中で最も安全な技術だと言えます。

基本的に、リチウムイオン電池は、そして、それが搭載されるEVも、適切なリスク管理をもって使用されれば、今日利用可能な中で最も安全な技術だと言えます。潜在的なEV消費者は、熱暴走、自然発火、電池管理システムといった専門用語に惑わされてしまい、EV購入の意思決定を躊躇し、EV普及に影響を及ぼす。事実、数値、科学、商業的利益を巡っては不明瞭な泥沼に陥っているのです。

EV火災については、信頼性の高い情報が不足していることを示す一例として、バッテリー火災の原因が挙げられます。リチウムイオン電池の火災は、決して自然発生的なものではなく、自動車の衝突といった物理的損傷、あるいは、電池管理と熱管理システムに壊滅的障害が同時発生した場合に起こり得る、安全な動作温度の超過が原因で発生するものです。

カソードの化学的性質が異なれば、急速分解が発生し得る、しきい値温度も異なります。ただ、単結晶技術の進歩とカソード粒子表面の保護膜の進歩によって、コバルトを使用しなくても、セルの化学安定性が劇的に向上しました。

電気自動車火災というまれなケースが発生した場合でも、フッ化水素ガスが燃焼生成物であることから、安全上最大のリスクをもたらすのは、液体電解質の燃焼です。この状況は、未来の固体電解質を含む、新たな不燃性電解質の開発によって克服することができます。

©アレッシオ・リン - Unsplash

EV産業がまだ開発の初期段階にあることを考えると、その普及を巡り、最も重要な検討事項は、コスト削減の実現と走行距離に関する不安への対処でしょう。

安全性は真っ先に考慮する事項ではないかもしれませんが、最も重要な点です。EVのリチウムイオン電池だけでなく、充電ステーションや固定グリッドスケール蓄電システムなど、エコシステム全体を見るという観点から理解する必要があります。こういった火災リスクの影響を最小限に抑えるために、近隣の環境、人が住んでいる地域までの近さ、消防隊員による対策といった要因を考慮する必要があるのです。

世界中の規制当局が、電池火災を理解すべく、より多くの研究を進めているのと同時に、緊急対応ガイドを改善し、情報のギャップを埋めて火災事故やその他の安全違反リスクを軽減するよう自動車メーカーに求めています。

EVの安全性プロファイルへの理解とリスク軽減戦略の開発が、EVをICEと同程度に安心できるようにする上で主軸となる要素の1つであることは、議論の余地もありません。EVがひとたび成熟すると、その確実性と信頼性を決定付けるのは安全性でしょう。

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