(写真1)
ニッケル含有材料には優れた特性があるため、石油・ガス部門においてニッケル含有材料を使用することは、初期費用が高騰している現在であっても、工学的に妥当であり、費用対効果に優れた投資となります。深い油井やガス井には高い耐食性を備えた管類が必要です。たとえばS31803などのニッケル含有ステンレス鋼は、冷間加工すれば965メガパスカルの降伏強度を実現できるうえ、高い強靭性と耐食性を維持し続けます。(写真1)
(写真2)
N07718やN09925などの析出硬化ニッケル合金は、熱処理すれば合金の母材中に析出相を形成し、材料に強度と硬度を与えます。「ダウンホールジュエリー」(油井やガス井に取り付ける特殊ツールのすべてを指す総称)は複雑な形状を持つため、並外れた強度でありながら水素脆化に強い析出硬化ニッケル合金を必要とします。(写真2)
(写真3)
ニッケル合金(通常はN06625)被覆の坑口装置やいわゆる「クリスマスツリー」(バルブ、スプール、継手から成る油井用アセンブリ)も、優れた溶接性と鋼基板への親和性を兼ね備えています。しかも必要とされる場所で費用対効果に優れた耐食性を示します。(写真3)
(写真4)
炭素鋼は(クラッド管やライニング管に比べて)、各種元素を添加して腐食から保護しなければなりません。しかし、ニッケル合金N08825とステンレス鋼で被覆または裏打ちしたパイプラインであれば、腐食性のある石油や天然ガスの輸送という問題を解決することができ、腐食防止のために抑制剤を注入する必要がありません。(写真4)
(写真5)
9Ni鋼(ニッケルを9%含有)製の容器は、液化天然ガスの貯蔵容器として費用対効果に優れており、安全操業の面で卓越した実績を残しています。それは9Ni鋼が極低温下で高い強靭性を持つためです。(写真5)
(写真6)
ニッケル合金N06625による内部溶接の肉盛りや被覆は容器を長期間にわたって腐食から保護し、しかも頻繁な点検や有機皮膜の交換の必要がありません。これらの圧力容器は流体の相分離や化学反応に用いられています。(写真6)
(写真7)
熱交換機は一つの媒体から別の媒体に熱を移動させるために用います。通常、石油・天然ガスプラントでは石油や天然ガスを冷却する作業が問題になります。たとえば石油は200℃~90℃から25℃に冷却しなければ取引先に輸送することができません。ステンレス鋼とニッケル合金(N10276)で製造した熱交換機は、伝熱という点だけでなく、抑制剤の注入では事実上保護することが不可能な設備の長期防食という要求に対しても最適な解決策です。(写真7)
プラントの低温区画に用いられるオーステナイト系ステンレス鋼のパイプやバルブは、極低温状態に至るまで信頼できる強靭性を実現する上で不可欠な部品です。なぜなら液化天然ガスはマイナス164℃で輸送されるからです。 ニッケル36%含有の低膨張合金を選択すれば、液化天然ガスを輸送するパイプラインやホースにおける熱応力の問題は解消されます。
前述のとおり、炭素鋼配管の場合はいろいろな元素を添加して腐食を防止しなければなりません。これらの元素は最終的には流体内に入り、土壌中に再び戻ることになります。それに対し耐食性のニッケル含有ステンレス鋼とニッケル合金は、それら元素で汚染された水が漏出し、周囲や地下水を汚染するリスクを最小限に抑えることができます。
ニッケル合金は、硫化水素を含んだ石油・天然ガス備蓄基地を開発する場合にも安全な選択肢です。これらの開発プロジェクトは世界の遠隔地で行うことが多いため、大部分を人員なしで運転できるように自動化します。ニッケル合金は、こうしたプロジェクトに不可欠な信頼性を提供します。
工学的な要件が厳しい場合において、ニッケル含有材料が有効であることは実証済みです。品質を長期間維持するので、他のプロジェクトで再利用できる可能性があり、また価格が高いためリサイクルの費用対効果が高く、リサイクルシステムも十分に確立されているからです。
写真:Butting-Bimetallrohre社およびニッケル協会