ニッケルアレルギー性接触皮膚炎

はじめに

ニッケルアレルギー性接触皮膚炎(NACD)は、充分な量のニッケルを溶出するアイテムとの、直接かつ長時間皮膚と接触することにより発症する、よく知られている皮膚疾患です。品物がニッケルアレルギーを引き起こす原因となるか、もしくはニッケルアレルギーを持っている人にNACDを発症させるかを確定するのは、ニッケル含有ではなく、ニッケル溶出が最も重要な要因となります。

NACDの説明と、どのようにすれば発症を避けることができるかを簡単に説明しているインフォグラフィック(英語版)は下記よりご覧いただけます。

より詳細の情報をご希望の方は、下記よりご覧いただけます。

Picture_Allergyピアスの材料についての意見書

ニッケル協会及びNiPERAは、健康への悪影響を避けることを含めた様々な理由から、適切な用途に適切な材料を使用することを支援しています。用途がボディ・ピアスなどといった、皮膚と直接かつ長時間接触する場合、ニッケルアレルギー性接触皮膚炎を発症させないためにも、適切な材料のみを使用すべきであります。人によっては皮膚と直接かつ長時間の接触時に、次の3つの状態が存在した場合:1)材料に含まれているニッケルが腐食している、2)その結果として生じたニッケル化合物が可溶化である、3)反応が起こるには、ニッケルイオンが皮膚に吸収されなければならない、アレルギー反応が出る可能性があります。

ヨーロッパの基準であるEN1811は、皮膚との直接かつ長時間接触という条件のもと、溶出される可能性のあるニッケルを規定したものです。子供用のイヤリングなどに使用される品物は、子供がニッケルアレルギーにならないため、もしくは既にニッケルアレルギーをもっている子が皮膚炎を発症しないために、溶出が0.2µg Ni/cm²/週(EN1811試験による)以上にならないようにするべきです。このニッケル溶出率は、皮膚と接触しているイヤリングの部分、及び耳にピアスされている部分のことです。

ニッケルアレルギー性接触皮膚炎のリスクとなるかどうかを決定するには、 (ニッケル含有そのものではなく、)ニッケルの溶出率が重要かつ関連してくるものであり、品物にニッケルが含まれていても、皮膚炎を発症させる原因とはなりません。例えば、「外科」で使用されるニッケル含有が10~15%のステンレス鋼(SS316L)は、0.2 µg Ni/cm²/週(EN1811試験による)以上のニッケルを溶出はしません。このことにより、皮膚との直接かつ長時間接触を行う品物に使用されるのに適しているとされています。ASTM(米国試験材料協会)の成人向けジュエリーに関する消費者安全規格(指定:F2999-13)には、外科用に使用されるステンレス鋼(一般的にニッケルの含有が10~15%)は、「成人用ボディピアス・ジュエリーの認定材料」のうちの一つと記されています。

よくある質問

ニッケルアレルギー性接触皮膚炎(NACD)とは何ですか?

ニッケルアレルギー性接触皮膚炎(タイプ4 遅延反応)とは、皮膚に侵入した可溶化したニッケルイオンに対する免疫反応です。通例、炎症や痒といった皮膚反応の経験があるニッケル皮膚感作性の人が、充分な量の可溶化したニッケルを溶出する製品と直接かつ長時間接触することによって起こります。

どのようにニッケルアレルギー性接触皮膚炎(NACD)は発症するのですか?

人によってはジュエリー、ピアス、ニッケル被膜された服の締め具(バックル、ファスナー、留め金など)といったようなアイテムから、ニッケル感作を引き起こすのに充分な量の可溶化したニッケルが溶出された場合、これらのアイテムとの直接かつ長時間接触により、ニッケル感作になる可能性があります。一度ニッケル感作になってしまったら、充分な量のニッケルを溶出するアイテムとの直接かつ長時間接触は(初回感作反応を起こした量より少ない量で)、ニッケルアレルギー性接触皮膚炎として知られる皮膚アレルギー反応を引き起こす可能性があります。

どのようなタイプの曝露がニッケル感作を引き起こすのですか?

ピアスに使用されている材料が充分な量のニッケルを溶出している場合、ピアス(イヤリングとボディピアスの両方)がニッケル感作の主な原因となります。ニッケル感作のその他の原因は、ニッケル感作を引き起こすのに充分な量の可溶化したニッケルを溶出するその他のタイプのジュエリー、及び服の留め具との直接かつ長時間接触です。

何人の人がニッケル感作、及びニッケルアレルギー性接触皮膚炎(NACD)にかかっているのですか?

調査では平均12~15%の女性が、1~2%の男性がニッケル感作性だとされています。

なぜ、男性より女性の方がより多くかかっているのですか?

現時点では調査は完了していないが、女性は男性より多くのジュエリーを身に着け、より多くのピアスをつけている事実から、この事が原因ではないかと思われています。感作のレベル、及びニッケル溶出の製品に対する曝露によるが、これらの少数はNACDの影響を受けています。

ニッケル以外で、一般的にアレルギー性接触皮膚炎を引き起こすものはありますか?

はい、あります。漆、香水、溶剤、抗菌性の軟膏はアレルギー性接触皮膚炎を引き起こす一般的な原因です。

自分がニッケルアレルギー性接触皮膚炎かどうか、どのようにすれば分かりますか?

ニッケルに対するアレルギー反応の症状は、皮膚の乾燥、肌荒れ、湿疹、水膨れ、炎症などです。これらの症状は、充分な量の可溶化したニッケルを溶出する製品に曝露した位置に起こります。これらの症状がアレルギーによって引き起こされたこと、またアレルギーの原因を確認するためには、皮膚科医の診察が必要となります。曝露と病歴の確認は必要であり、もし曝露と反応がニッケルアレルギー性接触皮膚炎と一致する場合は、皮膚アレルギーテストも必要になることがあります。

ニッケルアレルギー性接触皮膚炎(NACD)はどのようにすれば防げますか?

ニッケル感作性である人にとってNACDを防ぐ最も効果的なアプローチは、ニッケルの溶出が高い製品、とりわけニッケル溶出の高い材料から作られたジュエリーや服の留め具といったような物との直接かつ長時間接触を避けることです。外科用ステンレス鋼と分類されたような選ばれたアイテムは、ニッケル溶出が低い材料なので、直接かつ長時間接触における使用でも安心と考えられています。これらもNACDを防ぐのに有効です。

硬貨を手で触れることによって、ニッケル感作になりますか?

硬貨に手で触れることで、ニッケル感作性が引き起こされるとは考えられていません。調査によると、ニッケル感作性の人が1日8時間ニッケル含有硬貨に触れ続けることを10日間続けてもアレルギー反応は出ませんでした。また、デンマークの環境保護省から出された1999年リスク・アセスメントでは、一般市民が硬貨を取り扱うことに対する重大なリスクは見られないとの見解を示しています。何十億の人もが何世紀にも渡り、有害な影響を受けることなく、ニッケル含有硬貨に触れ続けています。

硬貨を手で触れることによって、ニッケルアレルギー性接触皮膚炎(NACD)反応は出ますか?

感作性を持っている人でさえ、硬貨、鍵、ハンドル、道具などといったようなニッケル含有製品との一時的で短時間の接触では、アレルギー反応の原因となる可能性は低いです。とりわけ硬貨に関しては、ニッケルが溶出する硬貨が使用されているカナダ及びアメリカ合衆国において、著しい数の有害影響の報告はされていません。興味深いことに、数十年に渡って、5、10、25セント硬貨が純ニッケルから作られているカナダでは、著しい数の有害影響の報告はされていません。アメリカ合衆国では、クォーターとして知られる25セント硬貨は、通常の使用においては短時間でのニッケル溶出は低い(しかし長時間接触では溶出が高くなる可能性がある)が、皮膚に対する重大な有害影響を及ぼしているといった兆候はありません。

ニッケル含有の食品は、ニッケルアレルギー性接触皮膚炎(NACD)を引き起こしますか?

ナッツ、チョコレート、豆を含むいくつかの食品は生来ニッケルを含んでいます。ニッケルに対して極めて感作が鋭いごくわずかな人(すなわち、とても低いレベルのニッケルにも反応する人)を除くと、これらの食品を摂取することによって、アレルギー性接触皮膚炎を引き起こすことはありません。ニッケル感作ではない人にとって、ニッケル含有アイテムからの経口曝露は、ニッケル感作を引き起こさないと考えられています。

公的にははどのようにジュエリーや服の留め具に含まれるニッケルから守ってくれているのですか?

欧州連合では、イヤリング、ピアス、その他のジュエリー、服の留め具といったような、皮膚と直接かつ長時間接触するニッケル製品の、ニッケル溶出率を制限する法律があります。EUのニッケル溶出の法律がきちんと守られている場合、皮膚科医はニッケルアレルギー性接触皮膚炎、ひいてはニッケル感作(すでにニッケル感作になっている人)になる人はとても少なくなると考えています。すでに、若い世代においてはニッケル感作と診断されている患者数は低いという証拠もあります。

閾値と関係があるニッケル溶出の相対量はどれくらいですか?

ニッケルNACDの閾値の平均は、ニッケルの溶出率である0.5 µg/cm²/週と関連しています。これは、ニッケル感作を持つ人のパッチテストの反応により、異なる材料からのニッケル溶出率を比較したことによって導き出された数値です。

ニッケル溶出データはどのように曝露と関連していますか?

欧州連合の標準化されたニッケル溶出試験(EN1811)は、腐食したニッケルが皮膚に吸収され、ニッケルアレルギー性接触皮膚炎を引き起こすには、どれだけの量が必要になるのかを測定しています。これは皮膚曝露の潜在的な量となります。品物に含まれているニッケルは、汗のような媒体と直接かつ長時間の接触が求められ、これによってまず腐食する必要があります。腐食した製品は、ニッケル粒子が皮膚に入り込めないこと、もしくは自分で反応を起こせないことから、皮膚に吸収されてニッケルアレルギー反応を引き起こすニッケルイオンに分解される必要があります。
よって、製品の材料がニッケル含有であるかではなく、ニッケル溶出するかが重要となってきます。非常に耐食性に優れたステンレス鋼(例えば、外科で使用するステンレス鋼)などのいくつかのニッケル含有材料は、ほとんどニッケルを溶出しません。ステンレス鋼が様々な用途に使用されるのはこれらの理由からです。

ニッケルアレルギーはアナフィラキシーショックを引き起こしますか?

いいえ、ニッケルアレルギーはアナフィラキシーショックを引き起こしません。これはタイプ4の「遅延反応アレルギー」であるからです。その他のアレルギー(タイプ1、2、3)と異なり、ニッケルアレルギーは生命を脅かすものではなく、アナフィラキシーショックを引き起こしません。

ニッケルアレルギーは遺伝的なものですか?

いいえ、ニッケル感作性は遺伝的なものではありません。これは大量のニッケルを溶出する材料との直接かつ長時間における皮膚接触(曝露)と関連があります。

NACDを誘因するにはどのような条件が起こる必要がありますか?

NACDを誘因するには、3つの条件が必要となります。それらは1.ニッケル溶出アイテムと皮膚との直接的な接触。2.ニッケル溶出アイテムと皮膚との長期間の接触。3.充分な量のニッケルの溶出と、それらが皮膚に吸収されることによりNACD反応が起こる、ことです。

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