化学物質管理

これまでの化学品管理規制は、新規物質とニッケルやニッケル化合物といった特定の既存物質に集中していました。社会で長い間使用されてきた数多くのその他の物質はよく研究されていなかったのです。従って、その安全な使用や特性に関する知識ですら限定的でした。結果として、規制は主によく研究された物質に重点が置かれるという不平等な環境が作り出されていました。

欧州連合(EU)のREACH規制は新世代の化学品管理制度の代表格です。EUで輸入・製造されるあらゆる物質に対して標準的な情報一式を規制当局が要求することにより(REACH登録要件)、平等な環境を作り上げる設計になっています。

REACH登録要件は、個々の製造業者や輸入業者が登録する年間トン数に比例します。この間に韓国では、欧州REACH (EU-REACH) に着想を得た「化学物質の登録及び評価等に関する法律(ARECS)」(いわゆるK-REACH)が導入されました。当初ARECSでは、特定の指定された物質に限り登録が要求されていたのですが、最近の改正により欧州REACHのそれに類似する範囲まで拡大されています。

物質とその使用に関する高品質な既存情報を収集し、不足分を補うためにさらなる情報を創出していく、これが成功につながる近代的な化学品管理制度の基礎なのです。

欧州REACHの登録評価制度は、化学品管理規制に対する堅固な基盤を構築したいと考えている国が国や地域の状況に合わせて適用できる優れたモデルの代表格である、というのがニッケル協会の見解です。

ニッケル協会の貢献

ニッケル協会の科学部門であるNiPERA Inc.は、ニッケルとニッケル化合物に関する出版済みあるいは未出版の高品質で包括的な毒性データを蓄積し、これらの物質に対する最新の有害性評価を保有しています。これが、様々な国と地域においてニッケルとニッケル化合物の理解を高める上で、ニッケル協会が実現した化学品管理への貢献の基礎を成しているのです。以下に当協会が成し遂げた化学品管理への貢献に関する事例を二つ紹介しておきます。

欧州REACH:ニッケルREACHコンソーシアムの立ち上げ

ニッケル協会は、EUにおける ニッケルREACH コンソーシアム事務局として、企業が各社の欧州REACHによる責任義務を果たす手助けをしています。NiPERAが同コンソーシアムの対象となっている13物質について有害性データを提供し有害性評価を準備する一方で、ニッケル協会が担っているのは当該物質の使用法に関する情報収集と分析を調整する業務です。こうすることによって、当協会がばく露シナリオを準備し、適切なリスク管理について助言することが可能になります。ニッケルREACHコンソーシアムは継続的な向上という原則に従って運営されています。NiPERAならびにニッケル協会が準備するREACH登録関連文書は新情報を反映させ、規制の変更・進化(例えば欧州当局により発行される新ガイダンスなど)に適応させるために毎年更新されています。

K-REACH:ニッケル協会はデータを共有し、ニッケルの特異性について助言

韓国では、2018年中旬までに登録を行うべく物質に数種のニッケル化合物が指定されています。これらの登録は異なる複数のコンソーシアムにより管理されているのが実情です。ニッケル協会は、ニッケル化合物に関するデータと適切な有害性評価をこれらのコンソーシアムと共有し、ニッケル化合物の特異性についても助言しています。改正ARECS法の下、韓国においてはニッケル金属も登録対象となる予定です。当協会は、この登録に向けても同様の方針を取る予定です。

ニッケル協会は、欧州ならびに韓国における経験に基づき管理物質の登録企業間の協力を促進させています。

ニッケル化合物においてはその使用と有害性プロファイルに類似性がある点を考えると、ニッケル化合物(およびニッケル金属)の各登録企業が協力すれば効率を向上し一貫性を強化することが可能であることを意味します。EUにおいてこの協力を促進しているのが登録者間の共同プロジェクトである 「ニッケルREACHコンソーシアム」です。ニッケル協会は、他の国や地域においても本アプローチの採用を推奨します。このような管理規制における一貫性は、ニッケルやニッケル化合物について提供される情報を評価する規制当局にとっても業務の簡素化につながります。

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