ニッケルブログ

宇宙開発競争へ、もう一度

2020年5月26日

宇宙事業は難しいものですが、ニッケルがそれを可能にしています。民間の宇宙開発企業である SpaceX 社を通して、米国は急速に宇宙開発競争への復権が期待されています。

この宇宙事業における主人公は SpaceX 社ですが、実際、各国のすべてのロケット・エンジンは、過去60年以上にわたってニッケル超合金製でしたし、そして今後も引き続きそうであるでしょう。なぜならニッケル超合金は、地球の軌道に到達するために必要なパワーと強度と信頼性を兼ね備えているからです。加えて、ニッケル超合金は再利用が可能なため、SpaceX 社は耐久性をも手にすることになるでしょう。

出典:SpaceX 公式画像

共通の要素はニッケルですが、ニッケル合金類はよく Inconel® として知られています。

Inconel® はニッケル品位が少なくとも42%~70% までの合金で、多くのクロムや鉄分を含有しています。ニッケル合金には多くの種類があり、オペレーションに必要な特定の要件を満たすため様々に調整されています。アルミニウム、ニオビウム、モリブデン、チタン、コバルトなどから、一種類もしくは数種類が若干量添加されています。

出典:SpaceX 公式画像

カギを握るのはニッケルです
ニッケルほどに、単独で強度と耐熱性をもたらす元素はありません

ニッケルほどに、単独で強度と耐熱性をもたらす元素はありません。

現代のロケット・エンジンにおいて、運航時の温度幅は最大の関心事となっています。それは約700℃ (1300℉) 位ではあるものの、現在は宇宙から地球へロケットを帰還させて再利用することが想定されており、その際に液体酸素による熱衝撃に耐え得るためロケット・エンジンの耐熱温度には更に大きな能力が必要です。現在宇宙での再噴射をしているのは Space X 社のみですが、将来は他のすべてのロケットも再利用されると見られています。

「エンジンの冷却」はエンジンの発火に際し、「ノズル」を含むエンジン部品が晒される温度に対して頻繁に用いられる方法です。その温度は大気から液体酸素に及び、SpaceX Merlin®のエンジン運航時の温度差は、-200℃ (-300℉) から約3,400℃ (6,000℉) にもなります。

幸いにも、エンジンに使用される材料、特に「ノズル」の部分はこの極端な温度差からは断熱保護されていますが、Rocketdyne F-1エンジンにより推進力を得ていた Saturn V ロケットが宇宙飛行士を米国国内から打ち上げていた当時から今日に至っても、この極限的な状況に何ら変わりはありません。

そして昔も今も、ニッケル含有材料がミッション・クリティカル(任務や業務の遂行に必要不可欠な要素)である事実は変わっていないのです。

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