化学的に良い状態の水域は、水枠組み指令の附則Xに示された環境基準(EQS)の要件すべてを満たします
水枠組み指令(WFD、2000/60/EC)は、欧州連合(EU)の地表水・陸水(内陸部に存在する湖沼、河川、ダム湖、河口域、地下水、湿地、雪氷などの水域、またはその水のこと)、沿岸水域、地下水を保護するための法的枠組みを確立しています。WFDの目的のひとつは、2015年までにEUの地表水と地下水を保護・強化・回復するし「良好な状態」を達成することを目的としています。
EUの水生環境に重大なリスクをもたらす物質は、WFDの附則Xで規定されています。これらの「優先物質」は、「優先」または「優先有害」のいずれかのステータスを持つものとしてさらに分類されます。 優先物質の環境品質基準(EQS)への準拠は、「良好な状態」を達成することが要件です。 さらに優先有害物質は、20年以内に放出・排出・損失が停止または段階的に廃止されることが求められます。ニッケルとその化合物は優先物質ですが、現時点では優先有害物質ではありません。WFDの付属書Xは、2008年に優先物質指令(2008/105/EC)の附則IIに置き換えられました。優先物質指令の附則Iには、WFDの地表水の分類に使用されるEQS値の詳細が含まれています。ニッケルおよびニッケル化合物のEQSを設定するための包括的な技術的根拠がなかったため、20 µg/Lの暫定値が内陸およびその他の地表水のニッケルのEQSとして設定されました。また、同指令(第3条第4項)は、優先物質の見直しが提案された場合、欧州委員会(EC)は技術的・科学的進歩を将来的に再検討することを明記しています。 見直しとしては、既存物質規制(793/93/EEC)のリスク評価(すなわちニッケルに関するEU RAR)と欧州REACH規制下の登録(EC 1907/2006)が再検討されます。 2009年後半に、WFDの優先物質の2回目の見直しが開始され、既存のEQSに基づく優先ステータスを再検討し、新しいデータに基づいて既存のEQSを改訂しました。 またこの見直しでは、優先物質の基準を満たす追加の物質を指定することも提案されました。ニッケルに関するEU RARからの情報は、優先物質指令(2013/39 EU)の最近の改訂で検討されています。この見直しの結果、20µg Ni/Lの既存の暫定値は、次の理由に基づいて生体利用可能なニッケルの量(バイオアベラビリティ・モデルに基づいて)4µg/Lに修正されました。
このファクトシートでは、欧州でのすべての淡水に適用できる、ニッケルの新しいEQSを導出し実装するプロセスについて説明します。